大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和24年(つ)618号 判決 1949年11月11日

被告人

平田重藏

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役八月及罰金六千円に処する。

但し本裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する右罰金不完納の場合は金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人柴田健太郞の控訴趣意は、

原判決は被告人の自白以外に何等の証拠がないのに拘らず被告人が判示物品の盜品たることを知つていた事の認定をなし有罪の判決をしたものであるから、刑事訴訟法第三百十九條第二項第三項の規定に背くもので違法である。

弁護人江口繁の控訴趣意は

第一点 被告人は贓物たるの認識を有しなかつたものである。

このことは訴訟記録並びに原裁判所の取調べた証拠に現われた事実によつて明かであると確信する。

原判決は証拠として「当公廷での被告人の供述」を挙げているが公判廷で被告人は自白していない。尤も第一回公判廷においての冐頭陳述で「事実相違ない」旨述べた記載があるがこれは罪状認否であり、自白と見るべきでなく、これを取つて罪証に供するのは証拠法則に反し、事実誤認を導いたものである。(以下省)

と謂うのである。

しかし乍ら、原判決挙示の被告人の原審公判廷の供述は、

弁護人所論の通り罪状認否に関する供述には相いないであろうが、この供述も刑事訴訟法第三百十九條第三項によつて、公判廷における自白と同視されるものであるから、本件につき被告人自白なしとする所論は到底理由がない。しかも、犯罪構成要件たる事実の大部分が他の証拠の裏付によつて認め得らるる以上其の一部である知情の点に付ては被告人の自白以外他の証拠がなくても違法ではないとするのが最高裁判所の判例(昭和二十三年三月十六日第三小法廷宣告)であるから、知情の点につき補強証拠が無い旨を主張して原判決を攻撃する弁護人の論旨を採用し得ない。

以下省略

(註) 結局、量刑不当にて破棄

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例